愛犬と一緒に夏に気を付けたい蚊、ノミ、マダニの対処法

夏は熱中症や脱水症状など気をつけなければいけない事が多く、ほとんどの人がそれらについては万全の対策をしています。しかし一方で蚊やノミ、マダニといった吸血昆虫への対策はあまりしていない人も少なくありません。

確かに彼らは小さいですし、「鬱陶しいだけで特に危険じゃない」と認識されてしまうのも頷けます。しかしその実態は様々な感染症や寄生虫を体内に潜ませているとても恐ろしい存在なのです。

今回はそんな吸血昆虫の生態や咬まれた際の対処方法について解説していきます。

犬に吸血する昆虫〜蚊編〜

 

ブーンブーンと鬱陶しい羽音を響かせ、気がつくと皮膚が赤くなり痒くなる……そう、蚊です。もはや夏の風物詩とも言える蚊ですが、実は感染減の原因にもなるとても恐ろしい一面を持っています。

ここでは蚊の生態や危険性、刺された時の対処法について解説します。

意外と知らない蚊の生態

蚊は体長15mm以下の小型の昆虫で、日本でだけでも実に100種もの種類が報告されています。吸血昆虫としても有名ですが、様々な感染症の媒介者としても有名で、日本では黄熱とデング熱が現在も警戒されていますね。

実は蚊は他の吸血昆虫と違ってご飯のために吸血しているわけではありません。蚊が吸血する理由は産卵のために栄養を取っているためであり、メスしか血を吸わないのです。また、体重が軽い上に飛ぶ速度も時速2km程度と遅く、ある程度強い向かい風があると進めないため、扇風機や窓際の近くにいるとあまり刺されないのも蚊の特徴。

しかしその分風の流れには敏感で、手ではたき落とそうとしてもひらりと躱される上に、羽の音が鬱陶しいことから多くの人から嫌われています。蚊は種類によって生息地が異なり、汚い場所や水辺、広い場所など広く分布しており、町の中心から少し外れた場所を散歩していると大抵蚊が近くに潜んでいるほどです。

蚊に刺されるとどうなる?

蚊に刺されるとまず先にかゆみ、刺された場所が赤く腫れ痒みが生じるのは人も犬も一緒です。ついつい掻いてしまうぐらい痒いですが、掻きすぎてしまうと出血したり化膿してしまいますので、そうなる前に動物病院で薬を処方してもらいましょう。しかし、恐ろしいのはそんな痒みなどでは無く、犬にとってとても危険な感染症である【犬フィラリア症】の感染源が蚊だと言うことです。

犬フィラリア症の正体はフィラリアという寄生虫が肺動脈や心臓に寄生することで発症するというもの。蚊にはミクロフィラリアと呼ばれる幼虫が体内に潜んでいる事があり、蚊が吸血する際にこの幼虫が非感染犬に感染します。そうして成長した成虫が卵を産み、今度は蚊が感染犬を吸血した際に血と一緒に流れていくのです。流れとしては、感染犬→蚊→非感染犬といった感じですね。

愛犬が蚊に刺された時の正しい対処

フィラリアに感染されていないかつ、痒みがそこまで酷くない場合は自然治癒力に任せることも多いですが、それ以外の場合は薬による対処が必要になります。特に犬フィラリア症は初期症状こそ咳や食欲不振といった軽度なものしかありませんが、進行すると腹水、吐血、血色素尿、呼吸困難など危険な症状が現れ始め、最悪の場合死に至る危険な感染症です。

更に症状が悪化したあとから治療するとなると、犬に対してかなりの負担をかけてしまいます。フィラリアは成虫になると肺動脈や心臓に寄生するため、これを除去しようとすれば自然と内臓に負荷がかかり、かといって薬で対処したとしても何らかの後遺症が残る場合もあります。

用の虫除けスプレーなどで蚊を寄せ付けないのはもちろん、蚊に刺されたことが分かった時点で早急に動物病院に行くことをおすすめします。

犬に吸血する昆虫〜ノミ編〜

小さな身体からは予想もできないほど大きく跳び回り、なかなか仕留めれない厄介なノミ。日本ではその程度の認識しかされていませんが、実はあの黒死病とも言われるペストの原因でもあります。

ここではそんなノミの生態や危険性、咬まれた際の対処法について解説します。

ノミの生態

ノミは体長1mm以下、最大でも9mm程度の極小さな昆虫で、日本ではネコノミやイヌノミなどの種類が分布されています。蚊と同じく感染症の媒介者としても有名で、今の日本ではあまり馴染みがありませんが、ペストを媒介しているのもこのノミです。日本も過去にペストの被害を受け、海外では今もなお苦しめられている人が多い病気の持ち主だと考えるととても恐ろしい昆虫ですね。

ノミの幼虫は成虫の糞や人や動物の食べ残し、フケなどを食べて成虫になり、成虫になってから人や動物を吸血します。子を産むために吸血する蚊と違って、ノミは普通のご飯として血を求めるため、ある意味蚊よりも被害に合いやすい昆虫だと言えるでしょう。

ノミの漢字は【蚤】と書き、とても痒い虫という意味を持ちます。先程から何度か見かける【掻く】という漢字も、蚤に吸血された場所が痒くて手で掻きむしるところから来ています。またノミの語源は血を飲む、跳ぶという意味から来ており、跳躍力はおよそ全長の100〜200倍だと言われています。

ノミに吸血されるとどうなる?

ノミは吸血されたからといって特別犬に恐ろしい感染症を発症させるわけではありませんが、唾液がアレルゲンとなる事で皮膚炎の原因になります。また、瓜核条虫の幼虫が体内に潜んでいる事もあり、吸血される事で犬に寄生先を変えますが、大量に寄生されない限り糞として排出されます。しかし、だからといって無視できるものでもなく、特にその繁殖力には注意が必要です。

ノミは光や熱を感知することで獲物を見つけ、寄生した後8分以内に吸血を開始し、およそ3〜4日で産卵を始めます。その後もそのサイクルを1〜2ヶ月かけて繰り返し、寿命を迎えます。つまり、定期的にノミを取り除かなければ想像よりも遥かに多くのノミを自分の住処に解き放つことになるため、発見したら直ぐにノミ取りグシで取り出し、水につけて溺死させましょう。

アレルギー性皮膚炎を始め、なんらかの原因で犬にとって害になることには間違いありません。ノミに咬まれた後に犬の体調が優れないようでしたら、直ちに動物病院で診察を受けさせてください。

愛犬がノミに吸血された時の正しい対処

ペットがノミに吸血された場合は潰さずにノミ取りグシで取り除くようにしてください。潰してしまうと瓜核条虫がペットの体内に入り込んでしまい、数によっては下痢や嘔吐の原因になります。唾液がアレルゲンだった場合のリスクも踏まえ、安全に取り出く必要があります。

またペットの体表に棲むノミを駆除できたとしても安心してはいけません。ノミの生殖力はかなりのもので、卵を産める状態になったら1日で30個もの卵を産み始めます。吸血される前に除去できる訳でもありませんし、ノミを確認したのなら自分の部屋は既に奴らの住処になっている可能性が高いです。

ペットや子供にも無害なスプレーも売られていますので、部屋を清潔に保ってノミを寄せ付けないようにしましょう。

犬に吸血する昆虫〜ダニ編〜

他の吸血昆虫とは違って家ではなく外を根城にしつつ、隙あらば愛犬や飼い主に寄生するのがダニの特徴。吸血されるだけでも嫌なものですが、ダニの場合は犬にとっても人間にとっても恐ろしい感染症の媒介者としても有名な点に注意が必要です。

ここではダニの生態や危険性、咬まれた際の対処法について解説します。

ダニの生態

ダニは3mm〜8mm程度の昆虫で、よく見れは分かるとおり分類上はクモの仲間です。皆様が特に見るのはマダニと呼ばれる種類でしょう。ダニもノミと同じくご飯として吸血してきますが、彼らの吸血方法は他とはひと味もふた味も違います。

他の吸血昆虫は皮膚に針状の口吻を突き刺し、ストローのように吸ってきます。しかしダニは鋏のような口を用いて皮膚を切り裂き、口下片と呼ばれる歯を刺すことで身体を固定し吸血してきます。更に吸血の際はセメントのような分泌液を利用して離れないようにしており、ちょっとやそっとでは駆除できないほど。

マダニは主に外の草っぱなどに潜んでいる事が多く、愛犬と散歩中に犬が草むらになにか見つけて駆け寄った時などに体表に移り吸血してきます。一方、家に潜むダニはイエダニと呼ばれており、こちらはネズミに寄生していて、宿主が死んでしまうと人に寄生し始めます。

ダニに咬まれるとどうなる?

マダニは痒みなども厄介ですが、なにより警戒すべきなのが感染症です。蚊のペストは日本には数年もの間確認されていませんし、ノミも犬にとって脅威となる感染症を持っている可能性は低いとされています。しかし、マダニはバベシア症やエールリヒア症など犬にとって恐ろしい病気の感染原となっているのです。

エールリヒア症は主に体重減少や出血、血色素尿などを引き起こす病気です。そしてバベシア症はなんとそれよりも更に危険で、発熱や茶色の尿であるビリルビン尿、貧血を引き起こし、最悪の場合は多臓器不全によって死に至ることもあります。

更に犬にとって危険な感染症はこれら2つですが、万が一人に感染した場合は日本紅斑熱やQ熱、ライム病、重症熱性血小板減症候群など重大な症状や命に関わる危険な症状を引き起こすものなどにかかる可能性があります。

愛犬がダニに咬まれた時の正しい対処

先述したようにダニは非常に固く身体を固定しており、適切な除去を行う必要があります。無理に引き抜こうとするとマダニの身体だけを引きちぎってしまい、頭部が体表に残ったままになってしまいます。そうなると化膿してしまう恐れがあるため、決して引き抜こうとしないでください。

また潰すのも当然NGです。これは他の吸血昆虫にも言えることですが、潰してしまうと吸った血液と昆虫の体液が体内に逆流し、昆虫の体内に潜んでいた寄生虫や感染源となる菌が愛犬の体内に侵入してしまいます。また一部ではワセリンや火が有効という俗説が広まっていますが、これらはすべて根拠のないものです。危険ですのでやらないようにしてください。

ダニを見つけた際は決して触らずに動物病院にて適切な方法で取り除いてもらいましょう。

吸血昆虫にご用心!

刺された時は痒さのあまりついつい掻きむしったり、摘んで引き抜こうとしてしまいそうになりますよね。しかし、吸血されているということは昆虫の体液がストローを隔てて自分の血液と混ざってしまうリスクがあることと同義です。下手に刺激するといつ体液が逆流するか分からないため、薬を服用しながら痒みが収まるのを待つのが一番の対処法です。

しかし犬は当然そんなこと知らないので、痒かったら遠慮なく掻いてしまいます。運良く感染症にならなかったとしても、掻くことで身体に傷を付けてしまいますし、どう転んでも良い結果にはなりません。飼い主が早急に気づき、動物病院に向かう必要があります。

せっかくの夏、吸血昆虫に気を付けながら楽しくお過ごしくださいませ!

                               

メモリーズ北九州コラム