犬にとってストレスになる環境とは?上手に解消させていくことが大切

犬は可愛らしくペットとして大変人気ですが、もともとは自然豊かな環境で暮らしていた動物です。人間が暮らしている現代社会は彼らにとっては正に異郷の地、私達が普通だと思っていることでも、犬にとって多大なストレスになることもあります。

ストレスを溜めすぎると不調になったり、不満が爆発して問題行動に発展してしまいます。なにより、せっかくペットとして招き入れたのなら、なるべくストレスの無い生活をして欲しいですよね。そして、そんな愛犬にとって理想の生活になるかどうかは飼い主様の手にかかっています。

今回は犬にとってストレスとなる環境やストレスサインについて解説していきます。

犬は実はとても繊細な動物!どんなことがストレスになるのか?

犬は芸を覚えたり、ご飯を前に待てと言われてもしっかりと待つなど利口な面が目立ちますが、一方で凄く繊細な面を持ち合わせています。何が愛犬にとってストレスになるのかを理解していないと、何気ない行動で愛犬を不満がらせてしまうかもしれません。

ここでは犬にとってストレスになる環境について解説します。

長時間の留守番

もともと群れで暮らすことが当たり前だった犬にとって、長時間一匹でいることは多大なストレスになります。また、犬社会はいわゆる縦社会であり、群れのリーダーが近くにいることで安心します。ペットとなった犬にとって、その群れのリーダーは飼い主様です。その飼主様がいつまで経っても帰ってこないとなると、犬は孤独感や恐怖を感じてしまうでしょう。

実際、過去には飼い主が帰ってこないからと探しにいったという事例も多数報告されています。短時間であれば、犬用のハウスなどを用意していれば大人しく待っていてくれますが、長時間となると話は別。最悪の場合、分離不安を発症、問題行動を起こしてしまう可能性があります。

一人暮らしなどの理由から、留守番させる機会が多い場合は少しずつ留守番の経験を積ませることで、ある程度ならちゃんと留守番してくれるようになります。日を跨ぐほどの留守番なら、ペットシッターに来てもらうことも視野に入れましょう。

家族の喧嘩

犬にとって飼い主様やその家族というのは群れのトップにいるコミュニティです。それゆえ、家族間での不仲や喧嘩には非常に敏感に反応します。犬は感受性も豊かですし、なにより賢いです。もし喧嘩が続くようであれば今後の生活が危ない……そういった不安からストレスを抱えてしまいます。

不安な時や悲しい時、愛犬に慰められた経験のある飼い主様は多いでしょう。それだけ犬というのは自分のコミュニティの空気を理解しています。怒声など大規模な喧嘩はしていなくとも、なんとなく険悪なムードを感じて不安になることもあります。

人間同士のトラブルは複雑な事情になることも多いかとは思いますが、愛犬に余計な心配をかけさせないためにも、喧嘩したらなるべく早く仲直りしましょうね。

生活環境の一新

犬にとって家というのは自分と飼い主と家族だけで構成された安全な縄張りです。自分たちの匂いしかない部屋は、なにより安心できる居場所と言えるでしょう。引っ越しによってそんな居場所が変わったとあれば、犬は動揺したり不安がります。飼い主様にとっては前から計画していた事でも、犬にとっては急な出来事も同然。「気が付いたら知らない場所にいた!」と思っても仕方ありません。

そして意外と見落としがちなのが、【車による長距離移動】そのものがストレスになっている可能性があること。狭い空間、知らない景色、車の騒音、犬にとって不快になりかねない要素がたくさんあります。車によるストレス、引っ越しによる急な環境の変化、部屋になれるまで吠えるなどの問題行動を起こしてしまったケースも珍しくありません。

もし引っ越しを検討しているのであれば、引っ越ししたあとはしばらく愛犬の側を離れないようにしましょう。知らない場所でも、飼い主が近くにいるなら安心できます。特に寝る時は慣れない場所で無防備な身体を長時間晒すことになるので、一緒に寝てあげたり飼い主の匂いがついた毛布を被せてあげるなどして愛犬を落ち着かせる必要があるでしょう。

去勢・避妊手術をしていない

本来、動物にとって交尾というのは自分の遺伝子を存続させるために必要な行為です。去勢や避妊手術をしていない犬は、子孫を残すために発情期に到来します。これは本能からなる衝動であり、個々の意思で制御できるものではありません。

さて、発情期に入った犬を放置してしまうとどうなるでしょうか?現在は去勢や避妊手術をしている犬が多くなったためあまり話題にあがりませんが、昔は犬が脱走して他の家の犬と交尾してしまうなんてことがよくありました。今でも話題にあがらないだけで、どこかで脱走してしまっている犬がいるかもしれません。

また、交尾以外でも発情期に入ったオス犬は他のオス犬の匂いにも敏感になります。自分が交尾するかもしれないメス犬を取られないように警戒するためです。最終的には手術そのものは飼い主様のご判断で決めるものではありますが、こういった様々なトラブルに発展してしまう恐れがあることは忘れないでください。

強い音や光

あまり認知されていないことですが、犬は焦点を合わせる能力が低く、簡単に言えば人間換算で0.2〜0.3程度の視力しかないと言われています。その代わり嗅覚や聴覚が優れている他、動体視力が高いため物の動きそのものには敏感に反応します。

車や電灯が当たり前な人間社会はいわば音と光によって構成された世界、犬にとっては好ましくない環境であることは間違いないでしょう。しっかりとしたしつけを行えばある程度は警戒心を解くことはできますが、しつけをしていない犬は車が近くを通っただけで激しく興奮します。

犬が見せるストレスサイン

私達もストレスが溜まればイライラしたり、身体を壊してしまうことがありますが、それは犬も同様。ストレスサインを見逃せば、それは万病の引き金となって愛犬に容赦なく襲い掛かってくることでしょう。そうならないように、犬がどれだけストレスを抱えているのかを判断できるようになりましょう。

ここでは犬が見せるストレスサインを、小中大に分けて解説します。

犬のストレスサイン(小)

多少のストレスは私達だって常に抱えています。犬の場合も、要求行動に留まる程度のストレスなら日常生活に支障はありませんし、サインもカーミングシグナルと呼ばれるボディランゲージ程度です。ここではそんなカーミングシグナルの中でも、特に見られるサインをまとめていきます。

・体を震わせる

・地面の匂いをかぐ

・あくび

・頭を横に降る

これらのシグナルは主に緊張や不安を和らげるためや、自分や相手を落ち着かせるためのものです。あくまで日常行動の一つではありますが、あまりに無視し続けるとストレスサイン(中)に移行します。

犬のストレスサイン(中)

ストレスサイン(小)を無視し続けたり、何か大きなストレスを抱えていた場合は下記のようにストレスサインもより過激なものになっていきます。

・吠える

・噛み付く

・家具を破壊する

・逃げる

・呼吸が激しい

これらのストレスサインはいわば飼い主様への要求がより過激になったものです。これらの行動を見せた際はただの問題行動だと決めつけず、適切に対処していく必要があります。もしどうしても手に負えない場合は無理をせずに獣医師に相談してください。

犬のストレスサイン(大)

慢性的なストレスを抱えていると身体の不調に繋がり、また精神的にも不安定な状態になります。

・自分の皮膚を過剰に舐めて炎症を起こす

・下痢や嘔吐が続く

・無気力になる

・自分の尻尾をおいかけたり、自分の足を噛むなど異常な行動を見せる

・粗相を繰り返す

上記のような行動、症状が見られた際は早急に動物病院で診察を受けてください。このまま放置すると自傷行動を繰り返したり、病気になってしまいます。

犬のストレス解消法

人間社会に生まれた私達の周りには、人間用の娯楽で満ち溢れていますよね。ゲームやスポーツ、映画や音楽など個々の趣味や嗜好で思う存分ストレス解消できます。しかし、犬は人間用の娯楽を満喫することはできません。犬には犬のストレス解消法がちゃんとあります。

ここでは犬のストレス解消法について解説します。

日々の散歩や適度な運動

人間であれば自分の趣味に没頭することでストレスを解消させますが、犬にとっては運動がそれに当たります。毎日飼い主様と散歩をすることが、愛犬には最高の過ごし方です。また、散歩はもちろんですが、ドッグランやアジリティなどで伸び伸びと運動することも、ストレス解消にはもってこいです。犬にとって飼い主様と楽しく遊ぶことこそ、一番の幸せですから。

ただし、運動する時は怪我などには注意してください。適切な運動量は犬種や年齢によって異なってきます。過度な運動は関節や足に負担をかけ、最悪の場合は脱臼や骨折をしてしまう恐れがあります。まずは軽い運動から始め、愛犬の状態を見ながらペースを上げるなどの配慮を忘れないようにしましょう。

飼い主とのスキンシップ

人間の言葉を話せないペットにとって、飼い主様とのふれあいはお互いの感情を確かめる唯一の手段です。どれだけご飯を与えていても、スキンシップを怠ると犬は自分に対する愛情が無いと思って寂しくなったり、悲しくなるなど精神的に不安定な状態になります。そのまま放置していると分離不安やうつ病などの病気に発展してしまいかねません。

スキンシップといっても何も難しいことはしなくてもいいです。愛犬がすり寄ってきたらちゃんと構ってあげる。散歩やドッグラン、アジリティは飼い主も一緒に楽しむ、寂しそうにしていたら愛犬の名前を優しく呼ぶ、これだけで十分スキンシップになります。お互いに一人の時間が欲しい時もあるかと思いますが、愛犬が構ってほしそうにしている時は存分に可愛がってあげましょう。

犬のストレスは溜めるのも解消させるのも飼い主様にかかっています!

ストレスが皆無の生活を送れれば最高ですが、残念ながら生きている限り大なり小なりストレスを抱えながら生きていくことになります。大切なのは【溜めすぎず、適度に解消させる】ことです。そしてペットの場合、それは飼い主様によって大きく左右されます。

普段の何気ない行動や、当たり前だと思っていた環境も犬にとってはストレスになりかねません。愛犬のサインは常に見逃さず、適度にストレスを発散させてあげましょう。

                               

メモリーズ北九州コラム