猫の発情期と去勢・避妊手術について

猫を飼い始めるとき、おそらくほとんどの人が去勢・避妊手術について悩むかと思います。望まない出産や発情した時の問題行動を考えると手術した方が良いという意見が多い一方、身体の負担や生殖機能を奪うことへのためらいから手術しない方がいいのではという意見も少なくありません。去勢・避妊手術はあくまで任意ですが、だからこそしっかりと自分の考えを持つことが大切です。

今回は猫の発情行動や去勢・避妊手術の流れ、そして飼い主としては最も避けたい多頭飼育崩壊について解説していきます。

オス猫の発情行動と去勢手術

オス猫は、メス猫を取り合うことになる関係上、発情した場合は人や猫に危害を加えてしまう可能性があります。後述する発情の性質も考慮すると、去勢手術の有無は飼い主としてしっかり考えなければいけない課題でしょう。

ここでは発情したオス猫の行動と、去勢手術の流れについて解説します。

オス猫の発情行動

オス猫には発情期とよばれる期間はありません。発情期が到来したメス猫のフェロモンや声に反応して発情します。ならば誰とも会わない室内飼いのオス猫なら安全だと思いがちですが、オス猫は遠くにいるメス猫の声や匂いにも反応するため決して安全とはいえません。野良猫もまだまだいる事ですし、繁殖させる意図がないのであれば去勢手術は必要です。

発情したオス猫はメス猫に自分の存在をアピールするために、【赤ちゃんのような大きな鳴き声】【匂いの強い尿をそこかしこにスプレーする】といった行動を起こします。また、他のオス猫よりも自分が優秀である事を証明するために【他のオス猫や人を攻撃する】事もあるため、飼い猫が発情しているようであれば可能な限り外に出さないようにしましょう。

去勢手術の流れ

オス猫は生まれてからおよそ6ヶ月程度で性成熟が始まり、そこから更に6ヶ月……つまり生後12ヶ月程度で交尾できる身体へと変わっていきます。そのため、可能であれば生後6ヶ月前後には去勢手術をするのが理想です。ただし、これはあくまで目安であり、猫の状態や体調によっては身体への負担を考えて、手術を遅らせることもあります。

手術の前に猫の身体が全身麻酔に耐えられるかどうかの検査(術前検査)を行い、問題ないと判断されたら麻酔を投与して眠らせてから手術を開始します。手術は外科手術となっており、精巣付近の皮膚を1cm〜1.5cm程度切開して精巣を摘出します。その後止血と縫合をして手術終了です。ただし、去勢手術は傷口の治りも早いため、動物病院によっては止血のみで縫合はしない所もあります。

手術はおよそ20分程度で終わるため、その後の猫の体調に問題がないようであればその日のうちに自宅に帰れます。ただし、院内の状況や猫の体調次第では1日入院することもあるため、なるべくまとまった時間を確保しておきましょう。

去勢手術後の自宅療養の流れ

去勢手術が無事終了したら、傷口が完全に塞がるまでエリザベスカラーという襟巻のようなものを首に巻かせて生活することになります。嫌がる場合は食事中や飼い主様がしっかり見ている時なら短時間だけ外しても問題ありません。ただし、傷口が気になって弄ってしまうと化膿の原因となってしまうため、あくまで緊急時のみにとどめてください。基本的には獣医師に指定された期間内は外すことは止めておいた方がいいでしょう。

傷口はおよそ1週間程度で塞がります。その間は化膿しないように、動物病院から抗生剤や消炎剤が処方されるため、忘れずに服用させてください。また、激しい運動は傷が開くため厳禁です。排便がおかしい、元気が無いなどの異常が見られた際は早急に動物病院に連絡しましょう。

メス猫の発情行動と避妊手術

メス猫は、オス猫に選ばれる立場なため、人や猫に危害を加えるケースは少ないです。とはいえ、メス猫の発情がオス猫の発情を誘発することを考えると、しっかりと避妊手術について考える必要がありますね。

ここでは発情したメス猫の行動と、避妊手術の流れについて解説します。

メス猫の発情行動

オス猫が発情したメス猫につられて発情するのに対し、メス猫にはちゃんと発情期とよばれる期間があります。一般的には春や夏に発情期が到来すると言われていますが、実際には日照時間によって周期をコントロールしているため、厳密には春や夏にだけ発情するとは限りません。

むしろ、人工照明が当たり前となった昨今ではこの周期にも狂いが生じており、秋や冬でも発情することがあります。先述したようにメス猫の発情がオス猫の発情を招くため、そういった意味では避妊手術の重要性は極めて高いと言えるでしょう。

メス猫の発情期はおよそ1週間~2週間程度続き、その間はオス猫に自分の存在をアピールするようになります。具体的には、普段聞いたこともないような大きな声で鳴いたり、匂いの強い尿をスプレーする、背中を床に擦り付けたりといった行動を起こします。ただ、オス猫のように、他の猫や人に対して特別攻撃的になることは少ないようです。

他にも、発情期になるとお尻を高く持ち上げるような姿勢を取るため、発情期の合図として覚えておきましょう。

避妊手術の流れ

メス猫はオス猫よりも性成熟が早く、個体によっては生後4ヶ月程度から始まる子もいるほどです。そのため、避妊手術もなるべく早めに行うのが理想ですが、あまりに早期だと身体への負担が大きいため、猫の状態によっては最初の発情期が終わってから手術することも多いです。このあたりについては、事前に獣医師と相談して決めましょう。

手術の前には、全身麻酔をしても問題がないかどうかを検査し、問題がなければ麻酔を投与して手術を開始します。また、猫が高齢だった場合はX線による胸部検査を行う場合もあります。手術は外科手術となっており、おへそから下の部分を切開、開腹して卵巣もしくは卵巣と子宮を摘出し、止血と縫合をして終了です。

手術時間は1時間程度であり、猫の体調が良好であれば当日中に自宅療養となります。ただし、猫の状態によっては一日入院して経過観察をする場合もあります。

避妊手術後の自宅療養の流れ

術後はエリザベスカラーやエリザベスウェアを着用して、傷口を噛んだり弄ったりしないようにさせながら自宅療養させます。嫌がるようであれば、飼い主様がしっかり見ていられる時間は外すこともできますが、あくまで緊急時の対応であり、基本はずっと直用させた方が安心です。

療養中は激しい運動を避け、傷口が塞がるまで安静にさせておきます。傷口はおよそ1週間程度で塞がりますので、その後は動物病院で縫合していた糸を抜いて一連の流れは終了です。もしそれまでに出血したり、食欲がないなどの普段とは違う様子が見られた場合は、すぐに動物病院に連絡してください。

多頭飼育崩壊の原因とその影響

多頭飼育崩壊とは【ペットの数が適切な飼育が不可能なほど増えた状態】の事を差し、命を預かった飼い主として最も避けなければいけない最悪な事態です。去勢・避妊手術をしないからといって、こういった問題になるわけではありません。しかし、あくまで可能性としては捨てきれないのも事実です。

ここでは多頭飼育崩壊の原因や、それによって飼い主やペットにどういった影響があるのかについて解説します。

多頭飼育崩壊はなぜ起きる?

前提として、多頭飼育そのものは何ら問題ない飼い方です。多頭飼育崩壊は【適切な飼育が不可能なほど数が増え、生活が破綻した状態】であるため、適切な飼育ができる状態であれば崩壊とは言えません。まして、いくらなんでも去勢・避妊手術をしていないだけで生活できないほどまで追い詰められるとは考えにくいですよね。多頭飼育崩壊は一体何が原因で起きてしまうのでしょうか。

こうした問題は去勢・避妊手術をしていないからだけでなく、飼い主が肉体的、精神的に不調を抱えてしまっている時に起こり得ます。実際、過去に多頭飼育崩壊を起こしてしまった人は、【高齢で判断力や体力が衰えていた】【認知症等の病気を患っていた】【何らかの要因で経済が破綻した】という場合が多いです。

こういった事情は自分の努力や意志だけでは解決できない事も多く、周囲の理解とサポートが必要です。しかし、飼い主の中には高齢者夫婦や独身世帯など、家に高齢者や飼い主のみしか住んでいないという人も増えてきており、第三者が気づかないまま多頭飼育崩壊にまでなってしまう事も珍しくありません。

多頭飼育崩壊が招く生活の破綻

言葉を濁さずに言うのであれば、多頭飼育崩壊の原因は飼い主様が何らかの事情で問題を抱えている状態だからです。そんな状態で沢山の動物が一つの家に住んでいるとなれば、不衛生な環境になってしまっていることは想像に難くないでしょう。

現に、今まで多頭飼育崩壊が起きた家の多くは、ペットの糞尿やご飯の食べ残しが散乱し、悪臭につられて害虫やネズミなどの衛星動物が集まっているような状態だったと言われています。そんな環境に身を置けば、まともな健康維持ができるはずもありません。

感染症のリスクが常に付きまとい、糞尿で衣服が汚れるなんて当たり前。経済が破綻していることから、ご飯も満足に食べられず、汚れた衣服を洗濯することすら出来ないことも多いそう。更に、悪臭や騒音問題から近隣住民とのトラブルも多く、賃貸を借りている場合は家賃を滞納してしまい強制退去になることも……。

多頭飼育崩壊を防ぐためには、第三者の理解とサポートが必要であることは先述した通りですが、このような状態になってしまうとご近所の理解を得るのは非常に困難です。取り返しのつかない事態になってしまうのも、こうした周囲からの孤立も大きな要因となっているのでしょう。

多頭飼育崩壊はペットにも影響が……

不衛生な環境が招くのは、飼い主の不調だけではありません。ペットの健康状態にも大きく関わってきます。状況によっては、動物愛護法における虐待(ネグレクト・死亡・遺体の放置)の定義に当てはまる事すらあります。それだけペットにとって危険な環境であることが多いのです。

多頭飼育崩壊によって増えた猫は、例え保護できたとしても殺処分される可能性も高いです。というのも、猫にとって劣悪な環境でダメージを受けたのは何も肉体だけではないからです。衛生状態が悪く、周りは仲間の死体や糞尿だらけ、酷いものでは共食いをしている事すらあるのだとか。そのような場所で生きていた猫は、精神的にもかなりのダメージを負ってしまい、人間が信じられなくなっています。

ボランティア団体や自治体も懸命に新たな飼い主を探してくれますが、それでも全てに譲渡先が見つかるわけではありません。残った猫や重病を患って完治する見込みのない猫、凶暴で人を傷つけかねない猫は、残念ながら殺処分される事が多いです。

去勢・避妊手術についてしっかり考えよう!

猫の去勢・避妊手術は確かに身体への負担が大きいですし、繁殖させる気がなくとも生殖機能を奪うことに罪悪感を抱く人も多いです。しかし、猫自身に性欲のコントロールができない以上、発情している間はどうしても猫にとってストレスになる生活を強要させてしまうことになります。もし飼い主が猫を抑えず、発情した時でも自由にさせていたら、人に危害を加えたり、今回解説した多頭飼育崩壊に繋がってしまうことすらありえるでしょう。

【猫自身は発情を制御できない】【猫の繫殖力は高く多頭飼育崩壊の可能性もある】という事を念頭に、もう一度猫の去勢・避妊手術について考えてみませんか?

                               

メモリーズ北九州コラム