【自分との戦い】ペットロス症候群とカウンセラーの存在

ストレス社会とも言われている現代において、ペットの存在は数少ない癒しとなってくれます。もしそんな大切なペットを失ったとして、果たしてどれだけの人が冷静に現実を受け入れることができるでしょうか。ペットブーム以降、ペットを家族として迎え入れる優しい飼い主が増えた一方で、失う悲しみからペットロス症候群を発症してしまう人もまた増えてきています。

今回はペットロス症候群の概要と、カウンセラーの存在は心の病に対して必要なのかについて解説していきます。

ペットロス症候群とは

ペットロス症候群という名前自体は昔よりも聞くようになりましたが、一方でどんな疾患なのかはまだまだ知らない人も多いです。ペットを飼っている人の中の更に一部の人のみが発症するため、「大げさだ」と捉える人も少なくありません。

ここではペットロス症候群の概要を解説します。

ペットを失う喪失感から発症する疾患

ペットロス症候群は縮めてペットロスと呼ばれることが多く、名前の通りペットを失う(ロス)ことで発症する心身に不調をきたす疾患です。あくまで失うことで生まれる喪失感から発症するため、死別に限らず窃盗や行方不明になっても発症することがあります。

飼い主にならないと発症しない疾患であるためか、日本ではあまり認知されていないものの、海外では比較的メジャーな疾患の一つです。また日本でも、ペットを生涯のパートナー(伴侶動物)とする飼い主が増えたことで徐々にペットロスに関する認識が広まってきています。

ペットロス症候群の厄介なところは先述したような【認知の甘さによる周囲の反応】と【感知するまでの期間は人によって大きく異なる】点です。かつてはうつ病がそうであったように、「これくらいで……」と思われることも少なくなく、またそういった環境に身を置いていると自分でも「情けない」と自分を追い込んでしまいがちになります。精神ダメージによる疾患のため、人によっては1年以上もの間ペットロスに苦しむ人がいるのも、こういった状況により拍車をかけているようです。

ペットロス症候群の主な症状

ペットロス症候群は不眠や心身症、過食症や拒食症など全体的にうつ病のような症状が現れます。また、気持ちが落ち込みやすくなり、本当にうつ病を発症してしまうケースも多いです。ただし、これらの症状が短期間しか現れない場合もあり、その場合は【精神の防衛反応の一種】として扱われ、ペットロス症候群と認められないことがあります。

言い換えれば、症状が長期間にわたって強く出ているのであればペットロス症候群の可能性が高いということです。前項で触れたようにペットロス症候群は、ペットを飼ったことのない人には「ただの甘え」と一蹴されてしまうことも多く、周囲の協力や支援が受けられない人もいます。もし自分がペットロスかもしれないと思ったときは、決して自分を追い込まずに心療内科を頼りましょう。

ペットロス症候群になりやすい人

ペットロス症候群を発症する人は近年になって急激に増えてきました。もともとペットは番犬に代表されるように、使役して人間の役に立つ存在として扱われることが多かったのですが、1980年代後半に起きたペットブーム以降は愛玩動物として人々の癒しへと変わりました。

【ペットは家族】という認識になったことで、今まで以上の愛情が注がれるようになり、その愛情がペットを失うことで精神的なダメージとして現れ、ペットロス症候群を発症する人もまた増えてきたのです。つまりペットロス症候群になりやすい人とは【ペットを大切なパートナーとして扱う人】ということになるでしょう。

ペットロス症候群はペットを愛してきた証であり、だからこそ現代の飼い主の悩みなのです。

ペットロス症候群にカウンセリングは効果あるのか

カウンセリングは傍から見るとただお話しているだけのようにも見えるため、本当に効果があるのか疑う人も多いです。懐疑心がある状態でカウンセリングを受けるよりも、ある程度事前知識を持って受けたほうが安心しますよね。

ここではカウンセリングの有用性や、友人や家族への相談との違いについて解説します。

カウンセリングとは

カウンセラーやカウンセリングと言われてあまり良くないイメージを抱く人もいるでしょう。しかし、ちゃんとしたカウンセラーは心が傷ついている人にとって心強い味方となってくれます。

カウンセラーは臨床心理学を用いて依頼人の悩みを一緒に考え、解決できるように導いてくれる職業の人たちのことです。臨床心理学は心理学の中でも、心身症や精神疾患に対して援助、予防、回復の方法を研究する分野です。

本物のカウンセラーは頼りになる一方で、外科手術のように目に見えた治療ではないためか、少数ながら詐欺が横行する職業でもあります。その手合いの人たちはちゃんとしたカウンセリングを行わず、依頼人にとって都合のいい甘い言葉ばかりを投げかけ、油断している隙に高額商品を売りつけたり、別の詐欺グループへと誘導してきます。

カウンセリングを受ける際は公認心理師や臨床心理士の資格を保有している人を選びましょう。再三になりますが、ちゃんとしたカウンセラーはペットロス症候群になってしまった人にとって心強い味方です。

カウンセラーと友人や家族の違い

カウンセリングは基本的に依頼人とお話することが多いのです。これだけ聞くと「わざわざカウンセラーに頼らなくても、友人や家族に相談するだけでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。確かに、親しい人の力を頼ることは良いことではありますが、気軽に相談できる一方で自分の本当に欲しい答えが返ってくる確率は低いです。

理由は単純で、相談できるほどの人であればあるほど、【相談ではなく会話になる】、【相談される側の感情が入り込む】ことが多くなるから。本当の意味での問題解決に必要なのは、【きちんと技術を持つ人】が【第三者の目線】から話を聞いてくれることです。そして、その役割をしっかりと果たしてくれる人たちこそがカウンセラーという職業ということですね。

カウンセリングを受ける際の注意点

カウンセリングは優しい人がただ慰めてくれるわけではなく、むしろ正反対とも言える相談援助です。カウンセラーの仕事とは、依頼人の心の奥底に眠る弱い部分を自覚させ、新たな気づきを持たせ、依頼人の悩みを共に解決していくこと。その過程で、自分が認めたくない汚れた部分や見たくない部分を見せつけられることもあります。

依頼人との信頼関係が重要であるため、かなり長期間にわたってカウンセリングをすることも多く、先述したことも相まって途中で投げ出したり、担当を替えてしまう人も少なくありません。しかし、カウンセリングを途中で投げ出すと「誰も自分をわかってくれない」と自分を追い込んでしまったり、新しいカウンセラーの人とまた長い期間のカウンセリングを一から始めることになります。

カウンセリングを受ける際は、なるべく担当を変えず、カウンセラーを信じるよう心がけてください。どうしてもカウンセラーを替える場合は、理由や一連の流れを新しいカウンセラーの人に説明することで、比較的スムーズにカウンセリングを続行できます。

自分でできるペットロスのメンタルケア

ペットロス症候群は心の病です。周りの協力はもちろん、自身でメンタルを安定させていかなくてはいけません。趣味を見つけたり、有給を取って羽を伸ばしたり、自分でできるケアをしていきましょう。

ここでは自分でできるメンタルケアをいくつかご紹介していきます。

趣味を見つける

ペットロス症候群に限らず、悩みや心の迷いに対する一番のメンタルケアは【趣味に没頭する】ことです。映画鑑賞や音楽、ゲームや漫画でもなんでも構いません。自分の意識をすべて向けられるような趣味を見つけましょう。なんでも……とは言いましたが、あえておすすめするのなら散歩がおすすめです。

お金もかけず、外を歩くことで気分転換にもなり、ある程度歩くのであれば健康にもなります。日中に出歩けば自律神経を整えることもできますし、静かな場所を選べば気分を落ち着かせることもできるでしょう。

友人や家族と過ごす

自分以外の誰かと共に過ごす時間は歳を取れば取るほど貴重な時間になります。社会人になると、なかなか仲の良い人と遊べる時間を確保することが難しいですよね。だからこそ、ために遊ぶ時間が尊く、メンタルも回復するものです。それに、一緒に過ごすだけなら、何も直接会わなくてはいけないわけではありません。

友人と一緒にオンラインゲームをしたり、家族とただ通話するだけでも時間を忘れて過ごせるものです。落ち込んでいるとついつい意識からはずれがちになりますが、たまには誰かと過ごされてはいかがでしょうか?

有給などお休みを取る

社会人になると、自分だけの都合だけで動くことが出来なくなります。とはいえ、たまには思いっきり羽を伸ばしたいですよね?そんな時は有給を活用しましょう。「落ち込んでいるからって休みを貰ってもいいの?」と思う方もいるかもしれませんが、有給の取得に理由はいりません。「私用で有給を貰います」だけでOKです。

会社が有給をずらすことができるのは【その人がいないと経営が傾くことが明らかな場合】のみです。ただ、本当にそのような理由で有給を取得できないような会社なら、正直なところそんな会社にいても明るい未来はやってきません。

そんな会社に勤めていては、ただでさえ苦しんでいる心を余計に追い込むだけです。思い切って有給をすべて使って転職活動をする選択肢も用意しておきましょう。

ペットロス症候群は自分との戦い

ペットロス症候群は、ペットを本当に愛していたからこそ生まれた心の病です。どれだけ苦しくても、周囲がなんと言おうとも、自分を追い込む必要はありません。確かにペットロス症候群を発症することで日常生活に支障が出るのは問題ではありますが、そんな状態になるほどペットを愛していたことは誇るべきことです。

心の病は自分との戦いであり、自分の弱さをどれだけ受け入れることができるかが勝負のカギとなります。友人や家族、カウンセラーなど様々な人と協力して、自分の心に打ち勝ちましょう!

                               

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