近年、ペットはただの愛玩動物以上の愛情を注がれており、名実共に家族として受け入れられています。終活を始めた人の中には、この世だけでなくあの世でも一緒にいられるように同じお墓に入ってほしいと願っている人も多いのではないでしょうか?
今回はペットと飼い主が一緒のお墓に入れるのかについて解説していきます。
目次
飼い主とペットが一緒のお墓に入ってもいいの?
ペットと一緒のお墓に入れる墓地や霊園はそう多くありません。これには様々な理由が絡んでいますが、特に仏教の側面から住職の人が認めていないためです。
ここでは仏教におけるペットの扱いと、法律上は同じお墓に入れるのかについて解説します。
仏教から見るペットの扱い
日本は国教を定めていませんが、実質的には仏教が多数派です。すなわち、日本で宗教の目線からペットを語るのなら、仏教の視点から見るのが適切でしょう。さて、そんな仏教ですが、動物と人間の間には大きな境界があります。誰もが一度は聞いたことがある【六道輪廻】という考え方です。
六道輪廻とは【地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道】の6つの世界を生まれ変わりながら廻るという考え方で、私達は人間道の世界を生きています。問題なのは動物の生きる世界である畜生道。ここは仏の教えを受けることができず、浄土へは行けないと言われているのです。すなわち、仏教の教義上は人とペットはあの世で再会できないとされています。
【犬畜生にも劣る】と言われるように、動物は人間の下に位置する存在として扱われています。仮に浄土へ行こうとするなら、まず人間に生まれ変わってからお経を唱える必要があるのです。
ただし、近年はこの考え方は間違っているという指摘も多く、同じ仏教であっても意見が別れています。
法律上は問題ない
宗教ではなく法律の目線で見た場合、ペットと人間が同じお墓に入ることは問題ありません。もっと詳しく言えば、【墓埋法に書いていないから問題なし】という事になります。
墓埋法は、正式には墓地、埋葬等に関する法律という名前で、人間の埋葬や墓地に関する原則が定められている法律です。そして、この墓埋法にはペットの焼却や埋葬、ペット用の墓地などについて一切書かれていません。法律において、書かれていないものは問題なしというルールがあるため、ペットに関しても同様に墓埋法は機能しなくなります。
また、環境省も昭和52年に動物霊園事業において扱われる動物の死体は廃棄物に該当しないと公表しています。これにより、人間とペットが同じお墓に入る場合は副葬品として扱われる事になりました。
結局は本人次第
ここまでの事をまとめると、【仏教的には好ましくない】【法律上は何ら問題ない】という事になります。また、ペットが天国に行けるか否かは同じ仏教でも意見が割れており、未だ決着がついていません。
ではどうすればいいのかと言うと、本人の意思を尊重するのが一番です。身も蓋もない話ですが、ペットに関する明確な決まりがない以上、自分の意思と墓地の管理人さんの意向が全てですから。
ペットと一緒のお墓に入る方法
近年はペットブームの影響もあり、ペットも一緒に入れるお墓が徐々に増えてきました。ここでは一般墓地や永代供養、そして樹木葬について解説します。
一般墓地
元々、仏教ではペットと人間が同じお墓に入る事はよく思われていません。そのため、古くから霊園や寺院を管理している住職さんは「隣のお墓の人が嫌がる」とペットも一緒にお墓に入れる事を認めていない事が多いです。
その一方で、比較的新しい霊園や寺院ではペットも可としている場所が多く、その場合は霊園の一部スペースを飼い主とペット専用として設けています。傾向としては、無宗教や宗教に拘りが薄い民間霊園であることが多いです。
永代供養
永代供養とは、家族などお墓を管理する人がいなくなった後でも、一定期間管理してくれるお墓の事を言います。ほとんどの場合は33回忌や50回忌など、節目まで管理してくれます。管理期間が終わると、他の方々の遺骨と一緒に埋葬(合祀)をします。
近年は永代供養プランのセット内容にペットを付ける場所も多い他、例えペットが先に亡くなったとしても、ペットだけを埋葬してくれます。
樹木葬
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木をシンボルとして、その周辺に遺骨を埋葬する方法です。古くからある埋葬方法ですが、近年の少子高齢化による墓地の継承問題の事もあってか、樹木葬を選ぶ方が増えています。
お墓ではなく木の根元に埋めることから自然回帰のイメージが強く、ペットと一緒に自然へ還りたいと願う人にとって理想に近い埋葬方法と言えるものでしょう。
ペットと一緒のお墓に入るなら
ペットと人が同じ墓に入る事はできます。しかし、そのためには家族と話し合って了承を得たり、自分が先に亡くなった時の対応も考えなくてはいけません。
家族と話し合うこと
ペットと一緒のお墓に入りたい場合、新しい霊園を選ぶことが多いです。そうなると気になるのは、やはりご家族がどう思っているか。特に仏教の教えを守っているご家庭では、どうしても対談は避けられないでしょう。
もし双方の意見が異なった場合、お互いがお互いの意見を尊重する事が大切です。【仏教では動物と人が同じお墓に入るなんて考えられない】、【近年のペットは最早家族も同然であり同じお墓に入れるのは当然】どちらも事実です。
あくまで見ている視点が違うだけであって、どちらかが間違っているわけではないため、お互いの意見を尊重しつつ自分の意思を伝えましょう。
自分が先に亡くなった時の事を考慮すること
人間であれペットであれ、この世に生きている限りいつ死ぬか分かりません。もし自分がペットよりも先に死んでしまったら……そんな不安を抱えている人は決して少なくないでしょう。そんな時はエンディングノートを作成しておくのがおすすめです。
エンディングノートとは、自分の死に備えて情報や死後のお願いを書き記すもので、遺書よりもフランクかつスマホやPCでも作成できる手軽さが特徴です。ただし、遺書と違って法的な効力は一切持たないため、あくまで家族に対するお願い程度になります。
4ペットと一緒に入れるお墓はまだまだ少ない
ペットを大切な家族の一員として迎え入れる事が当たり前になってきた一方、お墓も一緒に入れる場所はまだまだ圧倒的に少ないのが現状です。これには仏教の考え方は元より、その他にもスペースや資金の確保や他の家族への配慮も考えると、昔からの墓地や霊園では認められない事が多いのも大きな要因でしょう。
しかし、それでも着実にペット可のお墓が増えているのもまた事実です。ペットへの意識が変わってきた昨今、これからも徐々に宗教の枠を超えてペットと飼い主が幸せでいられる環境が出来上がっていくといいですね。