ペットには宗教特有のルールは適用されず、位牌や遺影が必ずしも必要ではありません。しかし、大切なペットが亡くなって、深い悲しみを背負った時、それらは【魂が帰ってこれる場所】としてペットだけでなく飼い主の心の支えになってくれるはず。
今回はペットの位牌や遺影が必要な理由や、ペット用に作られているものにはどんな種類があるのか解説していきます。また、記事の後半にはもし処分するなら必ず守ってほしい事についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
※今回は一部を除き仏教と深い関係があるお話です。しかし、本記事には個人又は団体の宗教観について語る意図は一切ありません。あくまで【位牌や遺影の理由】について解説していくものです。
目次
ペットに位牌が必要な理由と主な種類
位牌は戒名や俗名が刻まれた魂の依り代となる牌の事で、いわばもう一つの家のようなもの。位牌が無ければ魂は帰ってこられないとされています。
ここではそんな位牌がなぜペットに必要なのか、そしてペット用の位牌にはどんなものがあるのかについて解説します。
戒名で極楽浄土へ
戒名とは仏門に入り、仏弟子……つまりお釈迦様のお弟子さんになる際に与えられるあの世での名前です。反対に、現世での名前を俗名と呼びます。人が亡くなった時、仏教の方式でお葬式をしたらこの戒名を授かるかと思います。戒名で葬儀をすることで、現世での罪を悔い改めて極楽浄土へ行けるのです。因みに日本では亡くなったあとに戒名を与えられますが、実は世界でも日本だけであり、世界では亡くなる前に授かるのが主流なのだとか。
この戒名はペットにも付けることができます。基本的には一族を弔ってくれている菩提寺の元で戒名を授かることが通例ですので、ペットが亡くなった際も最初に菩提寺に相談しましょう。ただし、戒名はあくまで人が与えられるものですので、寺院によっては断られてしまう場合もあります。その場合は、ペット火葬業者に依頼することで、提携している寺院から戒名を付けてくれます。
また、そもそも菩提寺がない、宗教に関係ない葬儀を行いたい場合は飼い主がペットの戒名を付けてもいいでしょう。菩提寺がある場合でも、お寺のお坊さんから許可を貰えば自分で付けることができますよ。
ただし、そもそもペットには悔い改めるような罪はないということから、【ペットに戒名はいらない】という考えもあります。とどのつまり、戒名は付けてもいいし付けなくてもいいという認識で問題有りません。
因みに似たようなもので、浄土真宗では法名(ほうみょう)が、日蓮宗では法号(ほうごう)が与えられます。
位牌は魂の依り代になる
位牌は亡くなった人やペットの【戒名】【俗名】【没年月】【享年】などが記されたもので、その人の魂が宿る依り代です。こと仏教においては、遺体はただの魂がない抜け殻であり、魂の入った位牌の方が重要視されます。因みにこの位牌、もともとは仏教ではなく中国の儒教から来ているとされています。
人間の場合は四十九日に寺院で開眼法要を行って魂を位牌に込めますが、ペットは正式なルールがまだ定まっていません。そのため時期や場所は予め寺院のお坊さんと相談して決める必要があります。開眼法要以外にも開眼供養や魂入れとも呼びますが、すべて同じ意味ですので混乱しないようにしましょう。
ペット用の位牌の種類
正式に魂を入れる本位牌で最もメジャーなものは、恐らく黒塗りされた木製の位牌でしょう。実際、人が亡くなった時に使用されるのは木を漆(うるし)で塗った塗位牌です。しかし、無邪気という言葉がピッタリのペットの魂を込めるにはいささか重苦しいと感じる人も多いでしょう。そんな人たちのために、ペット用の位牌にはおしゃれなものがたくさん作られています。
材質(クリスタル製やアクリル製など)は元より、縦書きや横書きの選択、プリントやレーザー彫刻、果てには形状も様々。もちろん、本格的に弔いたい人用に高級木材を使った塗位牌もあります。ぜひ大切なペットのイメージにあった位牌を選んでくださいね。
ペットに遺影が必要な理由
遺影は位牌と違い、あくまで故人を偲ぶものです。そういった意味では位牌よりも重要度は低いかもしれません。しかし、一方で【ペットとの思い出を忘れない】という意味では、遺影ほど大切なものはないでしょう。
ここでは遺影がなぜペットに必要なのか、そしてペット用に売られているフレームにはどんなものがあるのかについて解説します。
ペットとの思い出を忘れない
位牌は魂を入れるための大切な依り代でしたが、一方で遺影は故人を偲ぶために作られるものです。位牌を故人のためのものとするならば、遺影は残された人々が故人を忘れないためにあると言えるでしょう。それはペットが亡くなった時も同じことです。
ペット用の写真を撮る際は、人間と同じく上半身だけを写したものでも問題有りませんが、やはりというかどうしても硬い印象を与えてしまいます。そんな時は、普段の何気ない表情や楽しく遊んでいる時の写真などを遺影として収めるのも一つの方法です。自分の楽しかった写真を見れば、お盆の時にペットが飼い主の元へ帰るための目印になってくれるでしょう。
家族として受け入れた証
ペットにも遺影を作るというのは、それだけ飼い主が【ペットを家族として愛していた】という一つの証にもなります。
昨今、ペットがただの愛玩動物ではなく家族として受け入れられ、またそれに比例してペットへ注がれる愛情も大きくなっています。そしてペットもまた、そんな飼い主と一緒にいたいと応えているかのように平均寿命も年々伸びてきました。そんな時代だからこそ、その命が失われたとしても変わらずペットを愛し続ける証明として位牌や遺影を作り、そして祀るのです。
もちろん、それだけが愛情表現ではありません。生きている間にどれだけペットの事を思い、そして育てたかも重要でしょう。それでも、ペットを愛せば写真も増えるものです。遺影はその写真を使った変わらぬ愛情の証として飾りましょう。
ペット用の遺影の種類
ペットの遺影用のフレームは【メモリアルフォトフレーム】や【メモリアルプレート】と呼ばれており、位牌と同様におしゃれなタイプが多いです。本格的にしたい人用に通常の額縁タイプも作られていますので、厳かに祀りたい場合はそちらもおすすめ。もちろん、人間用の額縁に収めても問題ありません。
近年は手元供養をする人も多いですが、そんな人たち用にミニ骨壺とセットになったフレームもあります。こういうタイプはスタンドの後ろ側に骨壺を収納できるのが多いので、あまりスペースを確保できないという人でも大丈夫。
位牌や遺影を処分する前にするべきこと
新しいものへ変えたい時や引っ越しの関係で、それまで使用していた位牌や遺影を処分する時があるかと思いますが、ここで一つ注意点があります。それは【絶対にそのまま捨ててはいけない】ということ。
遺影に関しては寺院でも意見が分かれますが、基本的にはそのまま処分しても問題ありません。ただ、思い出をゴミと一緒に捨てるのはあまりいい気分ではありませんし、可能であれば寺院で供養してもらうことをおすすめします。
問題は位牌のほう……特に開眼法要をしてもらった後の位牌は、絶対にそのまま捨てないでください。開眼法要をしたということは、位牌に魂が入っている状態ということ。そのまま処分してしまうと魂まで捨てることになります。必ず寺院で閉眼法要を行い、お焚き上げをしてもらいましょう。
位牌や遺影はペットを愛した証明
魂の入った位牌はいわばペットそのものです。ペットを愛しているのであれば、ぜひ作って祀ってあげましょう。そして遺影もまた、「いつまでも忘れないよ」という愛情表現として、そして亡くなったペットを偲ぶものとして大きな意味を持つはずです。ペットには決まった宗教のルールや風習などはありませんが……それでも作るだけで心の支えになってくれます。
ぜひペットのイメージに合った可愛い位牌やフレームを飾り、ペットの魂が帰ってきた時に喜んでくれるような居場所を作り上げてくださいね。