死というものは誰にでも訪れるもの、長年付き添ってきたペットであってもいつかお別れの時がやってきます。その時、どれだけペットに対して「幸せだっただろう」と胸を張れるかは、ペットを最後までちゃんとお世話できていたのかどうかにかかっています。
悲しい気持ちで最期を看取られるより、悔いのない表情で看取られた方がペットも安心して旅立てられるはず。そして、ペットを看取った後も飼い主様の義務はまだあります。中には法律的にも絶対に行わなければならないこともあります。辛い気持ちを抱えたままにはなってしまうでしょうが、最後まで責務を全うしましょう。
今回はペットを看取るときにしなければならないことや、看取った後にすべきことについて解説していきます。
目次
ペットを看取るのはどれだけ辛いか
ペットを飼ったことのない人と飼ったことがある人では、どうしても【ペットの死】に対する意識が異なってきます。そのため、ペットロス症候群に対する知識やペットの死亡理由に関して鈍感な方も少なくありません。自分の身の回りにもしペットを失って苦しんでいる方がいるのなら、ペットを失うことの苦しみを少しでも理解しようとする姿勢を忘れないでください。
ここではペットを看取る苦しみや、ペットの死亡理由から見るペット事情について解説します。
ペットロス症候群とは
ペットロス症候群とはペットを失うことで生まれる喪失感によって発症する心身に関する疾患の一つです。この失うというのは死別のみならず、盗難や行方不明であっても同じく発症してしまう可能性があります。ペットを飼ったことのない人にとっては信じがたいことかもしれませんが、実際に数ヶ月の間喪失感からうつ病にも似た症状に苦しんでいる人は大勢います。中には1年以上もペットロス症候群に悩まされている人もいるほど。
ペットロス症候群の症状はいわゆる精神病と同じようなもので、突然悲しみに襲われたり、不眠、食欲不振、疲労感などが見られます。ペットロス症候群を改善するためには次の4ステップを踏んでいくことになります。
ステップ1 ペットの死を受け入れられない状態の改善。
ステップ2 自分の気持ち(絶望感や無力感)を受け入れる
ステップ3 ペットがいない環境に慣れていく
ステップ4 ペットを思い出として心の中で整理し、元の生活に戻る
はじめからスムーズに行く方もいれば、ステップ1の状態から抜け出せない方もいます。もしこの記事を見ている方にペットロス症候群の方がいるのであれば、落ち着いてゆっくりと気持ちを整理することを意識しましょう。もし周りの人であれば、過度に世話を焼くのではなく、やさしく気持ちに寄り添ってあげてください。
ペットの死亡理由から見た現実
飼い主であれば、なるべくペットには天寿を全うして旅立ってほしいと思いますよね。しかし、実際にはペットの死亡理由の多くは悪性腫瘍や事故死であることが多いのが現実です。また、腎不全などで突然死することも少なくありません。「なにを不吉なことを!」と気分を害される方も多いと思いますが、いつか訪れる死について覚悟しておくことは必要です。
病気で亡くなるのももちろん辛いですが、事故や突然死で急に命が奪われるのは一体どれだけの苦しみなのでしょうか。ペットロス症候群で苦しんでいる方の中には、こういった心の準備もお別れもできない【急に訪れた死】を経験されている人もいます。
ちゃんとしたお世話をしていて、少し前まで元気だったペットが冷たくなっている……もしそんな状況に直面した時、冷静でいることなんてできないでしょう。ペットロス症候群で1年以上も苦しんでいる方が多いのは、こういった背景も一つの理由です。
ペットのためにしてやれることをしよう
大切なペットの命が失われかけている、そんな状態では動揺してしまうのも当たり前でしょう。しかしそんなときこそ、自分がペットのためにできることを見つけることが大切です。老衰、病気、突然死、どんな理由であれ、ペットのためにできることは必ずあります。
高齢期に入ったペットであれば最後まで介護を、病気のペットには適切な治療や痛みが少なくなる治療を、突然死であったとしてもペットの死後にちゃんと天国へ魂を送る責務がまだ残っています。ペットが安心して天国へ行けるように、自分がしてやりたいこと、すべきことをしっかりと見極め、最後まで飼い主として行動してください。
ペットを看取る前にすべきこと
老衰や病気の場合、弱っていくペットが少しでも楽に生活できるように介護やケアをすることになります。死に向かうペットを見るのは辛いですが、最後までしっかりとお世話しましょう。
ここではペットを看取る前にしていくことについて解説します。
終末期とターミナルケア
皆様は終末期という言葉をご存知でしょうか?終末期とは老衰や病気などにおいて、あらゆる手術が効果なく、余命が完全に判明された後、その余命までの期間を指します。【余命が〇〇と完全に断定された状態】と言えば分かりやすいでしょう。
そして終末期において、苦しみを少なくし残りの生活の質を保持・向上させるための医療、介護のことをターミナルケア(終末期医療とも)と言います。余命がハッキリしているからこそ、最後の命を楽しんでほしい、そのためにできることをすることです。
医療とありますが、病院で行うこともあれば、自宅で行うこともあります。主に発作の管理や、点滴など病気の管理が難しい場合は病院で、それ以外の場合は自宅でターミナルケアをしていくことを選択する人が多いです。
肉体のケアの方法
ここからは主に高齢期に入ったペットのケアについて解説していきます。まずは肉体面でのケアについてです。高齢期に入ったペットは【筋肉が衰えることで足腰が弱くなる】【食欲が以前よりも減退する】【視覚や聴覚などの五感が鈍くなる】この3つの状態になります。そのため、肉体面では主にこの3点へのサポートがメインのケアになっていきます。
まずは適度な運動。高齢期に入ったペットは運動に対してやる気が起きないケースも多いですが、運動して健康的な身体を維持しないと更に生活に掛かる苦痛が増してしまいます。どうしても乗り気になってくれない場合はおやつなどでモチベーションをコントロールしましょう。
次に食事面でのサポート。食欲があまり無い場合はウェットフードなどの嗜好性が高いものを食べさせる方法があります。また、歯や顎が弱くなってしまった子に対しても硬いドライフードよりも水分を含んでいるウェットフードの方が食べやすいです。
次に五感が鈍くなったことで怪我に対するサポートもより意識する必要があります。トイレの位置を近くしたり、ペットの通り道に障害物を置かない、家具の角にはクッションを取り付けるなどが有効です。
精神のケアの方法
高齢期に入ったペットは感情のコントロールが難しくなるのに加え、五感が鈍くなることで光や音に過敏に反応、怯えるようになります。そのため、そういった視覚や聴覚にうったえてくる刺激を抑えるための環境づくりをしていくことが重要です。
窓のカーテンは光を遮るように厚めのカーテンにしたり、ケースで飼っている動物なら遮音性のクッションを敷き詰めるといいでしょう。また、飼い主側からスキンシップを図るときは、いきなり触るのではなく。優しく声をかけながらゆっくりと触るようにするとペットも安心して身を委ねられます。
ペットを看取ったあとにすべきこと
ペットとの悲しいお別れをしたあとであっても、飼い主としてのお仕事は終わりません。ペットの種類によっては市役所に手続きをしに行く必要がありますし、火葬や埋葬の方法も様々です。辛い気持ちを無理に抑える必要はありません、全て終わったら自分の気持ちを素直に表現しましょう。
ここではペットを看取ったあとにすべきことについて解説します。
ペットが犬だった場合
飼っていたペットがもし犬だったら、市役所に死亡届を提出しなくてはいけません。提出期限は30日間と少し長めですが、手続き以外のことや気持ちの整理をしているとあっという間に時間は過ぎていきます。無理をしてまですぐに手続きを行う必要はありませんが、ある程度落ち着いたら市役所に向かいましょう。
死亡届は市役所によって多少形式は異なりますが、犬の名前や犬種、死亡理由などを書いていきます。またこの時、登録した時に渡された鑑札も返還します。もし鑑札をなくされていた場合は市役所に相談してください。
もしこの手続をしないまま30日を過ぎてしまうと、市は犬の死亡が確認できていないため通常通り狂犬病の予防接種の通達を行います。そして通達を受けたにも関わらず予防接種を受けなかった場合、20万以下の罰金が課せられます。そのため、死亡届は必ず提出してください。
また、提出方法は通常通り役所に行く以外にも、インターネットと郵送で簡潔する方法を取っている市も多いです。自分が住んでいる地域ではどのようになっているのか知りたい場合は市の公式サイトや相談センターに連絡してみましょう。
火葬、供養の方法
肉体とのお別れを済ませたあとは、火葬や供養を行ってペットの魂を天国へと送り届けましょう。現代では一口に火葬、埋葬と言っても様々な方法があります。霊園で火葬する、訪問火葬を使って自宅で火葬するといった火葬場所の他、個別火葬や合同火葬など火葬方式も様々です。
火葬した後は遺骨を供養する必要がありますが※1、これも自分たちにあった方法を選べます。一般的なお墓の他にも、自宅で供養する手元供養や、海や樹木に散骨する方法など、飼い主の状況やペットのことを考慮して、一番良いと思った方法で供養してあげてください。
※1 合同火葬では遺骨は返還されません。個別火葬を選びましょう。
大切なペットとのお別れは想像以上に辛いもの
今まで傍にずっといることが当たり前だったペットが居なくなる悲しみは、きっとペットを飼ったことのある飼い主様にしか分かりません。お別れができないまま死別する突然死も、弱っていく姿を見守ることしかできない老衰・病死も、その辛さは相当のものでしょう。
しかし、忘れないでほしいのは、その苦しみはペットを愛していたからこそ出てくる感情です。その感情は大切にしなくてはいけないものですし、それを無理に押し殺す必要はどこにもありません。落ち着いて、ゆっくりと気持ちを整理して、天国のペットが安心して向こうで楽しく暮らしていけるように、飼い主様もできることを探していきましょう。