ペット界の人気者といえば、猫や犬を思い浮かべる人も多いでしょう。特に猫はふてぶてしい態度と気品あふれる姿に魅了されますよね。そんな猫を飼う時に気をつけたいのが、【腎臓関係の病気】と【ストレス由来の胃腸炎】です。
今回は命に関わる本当に気をつけたい病気とその予防法を3つ取り上げて解説していきます。
目次
気をつけたい猫の病気【慢性腎臓病】
慢性腎臓病は高齢の猫が特に発症しやすい病気であり、全体の死因の3割がこの病気です。初期症状が多飲多尿程度しかないため、早期発見も困難とかなり厄介。
ここではそんな慢性腎臓病について解説します。
慢性腎臓病の概要
慢性腎臓病は別名【慢性腎不全】とも呼称される病気で、腎臓の機能が正常に働かないことで様々なリスクが生じている状態のことです。腎臓は体の中を巡る血液をろ過し、老廃物や毒素を尿と一緒に排出してくれる役割を持ちます。慢性腎臓病になってしまうと、その機能が上手く働かないということですね。
血液がろ過されないということは、血液に老廃物や毒素がどんどん溜まっていってしまうということ。更に、腎臓病に限らず死滅した細胞は二度とは元に戻らないため病気は完治すること無く、病気の進行を遅らせたり、生活の質(QOL)を維持する処置をとることになります。
慢性腎臓病は特に老年期に入った猫の発症率が高く、猫の死因の3割がこの病気が原因です。ただし、早期発見・早期治療ができた場合は生活の質も落とさず老後を過ごせるため、定期的な健康診断が肝要です。
慢性腎臓病にかかった猫の余命はステージ2までは1150日程度、ステージ3では778日程度、ステージ4では100日程度だとされています。
慢性腎臓病の主な症状
慢性腎臓病は初期段階では自覚症状がなく、全腎機能の25%しか生き残っていない状態でようやく多飲多尿が見られます。その状態でも猫は普段と変わらず元気であることが多いので、目視での早期発見は困難でしょう。健康診断が大切なのにはこういった側面もあるからです。では、ここからは病気の進行具合を示す【ステージ別】で詳しい説明をしてきましょう。
・ステージ1
無症状の段階で、猫も元気な状態です。しかし、目視ではわからないだけで、すでに77%の腎機能を失っています。尿検査や腎臓の検査によって早期発見が可能な状態です。
・ステージ2
無症状、もしくは初期症状である多飲多尿が見られますが、猫は変わらず元気であることが多い状態です。多飲多尿になるのは、腎臓が機能しないために血液の中の老廃物や毒素をうまく濃縮できず、代わりに大量に水を飲んで大量に尿を排出しようとしているため。ステージ2では腎機能が75%も失っています。
・ステージ3
血液の中の老廃物や毒素が溜まり、尿毒症が発症する段階です。食欲不振、頭痛、吐き気が見られる他、水分がたまることでむくみや動悸、息苦しさが確認されます。腎機能も極度に低下しており、治療をしないと危険な状態です。
・ステージ4
尿毒症がかなり進行しており、集中治療をしなければ生命維持も困難な状態です。
慢性腎臓病の予防法
猫の祖先であるリビアヤマネコは砂漠で暮らしていました。水が少ない砂漠で生きるためには、わずかな水分を効率的に活用できるように腎臓で尿を圧縮する能力を持ち、腎臓への負担も大きい動物です。特に高齢になった猫は体の衰えもありますし、慢性腎臓病のリスクは宿命と言ってもいいでしょう。
では効果的な予防法はないのかという話ですが、残念ながら【これだけやっていれば大丈夫】という方法はありません。定期的な健康診断による早期発見、健康的な生活とこまめな水分補給で腎臓への負担を減らすなど、普段の過ごし方にかかっています。
もし水をあまり飲みたがらない場合はウェットフードに変えてみると食事と水分補給を一緒にできます。また、猫の通り道に水飲み場を複数箇所に設置しておくと、気が向いた時に飲んでくれますよ。
気をつけたい猫の病気【尿路結石】
自分の体の中に石が作られている……想像しただけで恐ろしいですよね。【出産の次に痛い】とも言われる尿路結石は、猫も発症事例が多い病気です。
ここでは尿路結石について解説します。
尿路結石の概要
尿路結石とは尿路……すなわち腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこかに結石ができている状態のことです。そのため、特に尿道が長いオス猫が発症しやすいため注意が必要です。ただ、メス猫であっても尿路結石になることは十分にあるため、メス猫だからといって油断してはいけません。あくまでオス猫の方が発症しやすいとだけ覚えておきましょう。
結石の成分はいくつか種類がありますが、猫の場合は療法食で溶かせるストラバイトと、療法食で溶かせないシュウ酸カルシウムがほとんどです。また結石のサイズも、目に見えないほどの結晶から、0.5mm程度の結石まで様々です。
結晶程度であればおしっこの際に尿と一緒に排出されますが、厄介なのは大きい結石。ここまで大きくなると尿道を塞いでしまい、尿を排出できなくなります。このような状態を尿道閉塞と言います。
この尿道閉塞になると、尿がどんどん溜まって膀胱が破裂してしまったり、腎不全及び尿毒症を発症してしまうなどかなり危険な状態になります。そのため、尿道が塞がれているとわかった時点で早急に摘出しなければいけません。
尿路結石の主な症状
尿路結石は尿の通り道に石がある状態であり、症状やサインも尿や腎臓にくるものがほとんどです。ここからは【小さな結晶】と【大きな結石】に分けて、具体的に見ていきましょう。
・小さな結晶
結晶の場合は尿道を塞げるほどのサイズでないため、基本的には尿と一緒に排出されます。ただし、結晶が尿道を傷つけ炎症を起こしてしまうことがある他、流れなかった結晶が成長することもあります。猫の尿を良く観察した時に尿がキラキラしていたら、この結晶の可能性が高いです。
・大きな結石
大きな結石の場合は先述したように尿道を塞いでしまうため、おしっこしたとしても全然尿が排出されません。また、お腹を押さえて痛そうにしたり、食欲不振になります。放置していると命に関わるほど危ない状態ですので、早急に診察・治療を受けさせましょう。
尿路結石の予防法
尿路結石は尿の通り道に出来る石……ということは、尿をたくさん出し、健康的な生活をしていればそうそう大きい結石が出来上がることはありません。しかし、一方で尿路結石は再発率が高い病気でもあります。普段からの予防と対策をしっかり行っていきましょう。それでは具体的な予防法を【食事】【水分補給】【運動】の3点から見ていきましょう。
・食事
結石は主にミネラルバランスが偏ることで出来上がります。食事はミネラルバランスを意識し、尿のpHをコントロールできる食事を心がけましょう。
・水分補給
小さな結晶は尿と一緒に排出できるため、普段からこまめな水分補給を意識し、ちゃんとおしっこしてくれるようお世話しましょう。
・運動
運動をせずに肥満になってしまうと、贅肉で尿道を圧迫してしまい、小さな結石でも尿道閉塞を誘発してしまうリスクが高まります。適度に体を動かし、スリムな体型を維持させるよう心がけましょう。
気をつけたい猫の病気【胃腸炎】
私達人間でも、神経質な人や真面目な人がよく起こしやすい印象がある胃腸炎。実は猫も胃腸炎になりやすい動物なのです。
ここでは胃腸炎について解説します。
胃腸炎の概要
胃腸炎とは、何らかの要因で胃や小腸、大腸などに炎症を起こしている状態のことです。胃腸炎には急性胃腸炎と慢性胃腸炎の2種類があり、急性は数日で治まるのに対し、慢性は長期間にわたって症状が続きます。
急性胃腸炎は軽度であることが多く、猫も元気であることがほとんど。更に2日程度で治るため、動物病院で診察さえ受ければ問題ありません。一方で慢性胃腸炎は症状が続くにつれ、猫も体力を徐々に失い、さらに脱水症状に陥る事もあります。
詳しく症状は後項で解説しますが、胃腸炎は下痢や嘔吐をともなう病気です。この2つは様々な病気で起こり得る症状ですので、安易に胃腸炎だと決めつけず、必ず診察を受けさせましょう。
胃腸炎の主な症状
前項で解説したように、胃腸炎には急性と慢性の2種類があります。それぞれ症状に大きな違いはありませんが、症状が続く期間が異なるため、猫の体調など一部異なってくる内容があります。それでは、具体的に見ていきましょう。
・急性胃腸炎
主に下痢や嘔吐が見られ、数日で治ることが多いです。軽度であれば猫の食欲や元気もいつも通りであり、薬を貰って経過観察で済むことがほとんどです。重症の場合は下痢に血が混じっていたり、過度な嘔吐を引き起こしてしまうこともあります。
・慢性胃腸炎
主に下痢や嘔吐が長期間にわたって続き、長くなるにつれて猫の体調も悪化します。体から水分が失われていくため脱水症状になったり、免疫力が落ちて様々な病気が併発することもあります。早めに診察を受けさせないと危険です。
胃腸炎の予防法
猫の胃腸炎の原因は過度なストレスや食事です。具体的に見ていきましょう。
・過度なストレス
猫は繊細な動物で、引っ越し直後、知らない人が訪問する、ペットホテルに預けられるといった猫にとって非日常的な変化が過大なストレスになります。引っ越しした直後や知らない人がいる場合はそばを離れない、ペットホテルから帰ってきたら体調チェックを欠かさず行うようにしましょう。
・食事
普段食べられていない物や油分を多く含んでいる食べ物は胃に負担をかけやすく、胃腸炎になってしまうこともあります。基本的にはキャットフードを適切な量与えていけば問題ありません。手作りご飯を作りたい場合は獣医師やペット専門の管理栄養士に相談しましょう。
猫は繊細な動物
猫はその見た目や態度とは裏腹に、とても繊細な動物です。普段の食事や水分補給、運動など健康的な生活をしていないとすぐに体調を崩してしまいます。特に水分補給は飼い主がサポートしないと積極的に取ることがないことにも要注意。
今回解説した腎臓病のような「猫の様子がおかしいような……?」くらいの小さな変化であっても、実は危ない状態ということもありえます。体調チェックと健康診断を忘れず、いつまでも元気な姿でいてくれるようにしっかりお世話しましょう!