夏は高温多湿な季節で、楽しいイベントのみならず熱中症などの危険な症状も多発する時期です。私たち人間も当然ですが、犬や猫を飼っている飼い主様はその子たちの熱中症予防にも力を入れなければいけません。熱中症はとても危険なものであり、下手をすれば命にも関わってきます。
しかし、一方である程度楽観視している人も少なくなく、昼間に犬の散歩をしている人や車内に犬を置いていく人たちもニュースやSNSで見かけてしまいます。「まさかこんな事になるなんて……」と後悔してからでは遅いです。常に熱中症のリスクを考え、万全の対策をしましょう。
今回は犬や猫の熱中症リスクや症状、対策について解説します。
目次
犬猫と熱中症の脅威
熱中症は私たち人間のみならず、すべての動物がかかるもの。特に犬や猫は熱中症にかかりやすいと言われており、飼い主は常に万全の準備をしなければなりません。しかし、町中を散歩していると、お昼の最も暑い時間帯に犬の散歩をしている人たちを結構見かけます。まずは、熱中症がどれだけ危険なのかを見ていきましょう。
ここでは熱中症の脅威について解説します。
熱中症の恐ろしさ
熱中症は軽いものであれば、日陰で休み、十分な水分補給をすることで自然に治まります。しかし、一度重症化すれば命に関わるほど危険な状態であり、本来は決して楽観視できるものではありません。
自分で考え、対策をできる私たち人間ですら、2020年の夏のみでおよそ6.5万人が熱中症が原因で緊急搬送、そのうち900人が死亡しています。特に近年は前年度の最高気温を上回る事が多く、マスク事情も踏まえると今までよりも被害が拡大することも考えられます。
人間がこれなら、ペットはどうでしょうか?メジャーなペットとして知られる犬や猫は、身体と頭が地面と近い四足歩行であることから熱中症にかかりやすいと言われています。様々なペット保険会社のアンケートでも、飼い主の半数以上が犬や猫の熱中症を疑ったという結果がほとんど。
更に動物病院のデータまで調べていくと、より恐ろしい事実が浮かんできます。なんと重度の熱中症にかかった犬や猫のうち、およそ40%が24時間以内に亡くなっているとのこと。熱中症は人間にとってはもちろんですが、ペットにとっては更に危険な状態だと言えるでしょう。
犬や猫はなぜ熱中症になりやすいのか?
先程、犬や猫は身体と頭が地面と近いため熱中症にかかりやすいと記載しました。これについて、もう少し掘り下げていきましょう。犬猫を抱っこすると、なんとなく「暖かい」と感じる人は多いでしょう。実は、犬猫の平均体温は38℃程度であり、実際に平熱が人間よりも少し高いのです。
平熱が高い=熱中症に強いわけではありません。人間も含め、基本的には体温が40℃を超えると熱中症のリスクが生まれると言われており、犬や猫で考えるとなんと2℃上がるだけで熱中症になりうるということになります。
更に彼らは汗をかくための【汗腺】が少なく、体温調節が難しい動物としても知られています。夏の暑い時間帯に、不用意に外に出たら一気に熱中症になってしまうでしょう。加えて、野生動物として生きてきたペット達は、弱った姿を中々見せません。そのため、実は軽度の熱中症だったのに飼い主が気づかず重症化してしまったというケースも十分考えられるのです。
熱中症は外だけではない
熱中症の危険は外だけでなく、むしろ屋内の方が危ないです。外出するとなれば、普通はそれなりの準備をしていきますし、木陰に入れば外の風である程度は涼めます。しかし、屋内はどうでしょうか?風の流れは決められた場所から、扇風機やクーラーでは限界があるなど、屋内でも熱中症のリスクは大いにあるのです。
実際、総務省によれば近年の熱中症報告のうち、実に4割程度が室内であるとのこと。部屋にいるから平気という考えは捨て、温度や湿度の管理や水分補給は忘れずに。ペットを飼っている人はこれをより一層意識していかねばなりません。
最も不用心かつ恐ろしいのが、車内放置による熱中症事故。悲しい事に、毎年夏になると必ずと言って良いほど【車内に長時間放置され、熱中症によって死亡した】というニュースが流れてきます。「たった数十分の買い物」「ちょっとそこまで行くだけ」そういった油断が、尊い命を危険に晒してしまうのです。
犬や猫が熱中症になった時の症状と応急処置
熱中症の症状や応急処置は基本的に人間と変わりませんが、自分で対策できる私たちと違って、犬や猫には飼い主自身が処置しなければならない時があります。いざという時のために、症状や応急処置の方法について学んでおきましょう。
ここでは熱中症の主な症状と応急処置の方法について解説します。
熱中症の主な症状とサイン
熱中症は初期症状だと、心拍数の増加やよだれが増える、落ち着きが無くなる、目や口の中が赤くなるなどが挙げられます。また、犬の場合は「ハッハッハ」と喘ぐような呼吸(パンティング)を行うようになります。このようなサインが見られた際は、木陰などの涼しい場所に移動し、水分補給をさせましょう。
症状が重くなっていくと、やがて下痢や嘔吐、けいれん、舌や歯茎が青紫になるチアノーゼが出始め、ぐったりとして動かなくなります。この状態にまでなると意識がもうろうとしている場合もあり、仮に治ったとしても何らかの後遺症を残すことも珍しくありません。急いで応急処置と動物病院への連絡を行いましょう。
熱中症になった時の応急処置
ペットが熱中症になったとしても、決して慌ててはいけません。焦らずに応急処置を行い、状況に応じて動物病院へ連絡を入れましょう。
さて、具体的な応急処置の方法ですが、まず最も基本的なことは日陰に移動すること。室内であれば風通しの良いところへと移動してください。次に水分補給、無理に飲ませずにゆっくりと補強させましょう。これで基礎的な部分は完了です。
次は状態に応じて行うべき処置の説明です。氷を入れるための袋(氷のう)や保冷剤をタオルで巻いたもので、首や脇などの太い血管がある場所を冷やして体温を下げます。他にも水で濡らしたタオルでも大丈夫です。ただし、体温を下げすぎると低体温症になるため却って危険。なるべくなら獣医師の判断を仰ぎながら行いましょう。
犬や猫を熱中症にしないための対策
熱中症の症状や応急処置の方法を覚えておけば、確かにいざという時に安心です。しかし、そもそも熱中症にさせないようにするのが一番なのもまた事実。室内環境や外出時の注意点など、普段から熱中症対策を常に意識しましょう。
ここでは熱中症予防について解説します。
留守番をさせる時はエアコンを起動させる
ペットを留守番させる時は例えどんなに短い期間であっても、かならずエアコンを作動させてから出かけるようにしましょう。室内での熱中症は、それだけ恐ろしいものです。外で軽い熱中症になったのであれば、当然飼い主様もそこにいらっしゃいますし、万が一の時は通行人もいます。しかし、室内ともなればそうはいきません。
もし犬や猫が熱中症になったとしても、誰も気づかず、下手をすれば重症化しそのまま死んでしまうことすらあり得ます。また、外出時でなくとも、基本的にはエアコンによる室温及び湿度調節は行うべきです。犬は室温22℃、湿度60%、猫は室温20℃〜25℃、湿度40〜60%が推奨されています。常に最適な環境を整えておき、室内熱中症のリスクを極限まで下げましょう。
ペットと一緒に外出する際の注意点
犬の場合は毎日散歩をするかと思いますが、夏場は時間帯と万が一の対策を意識しましょう。夏の地面は想像を絶する熱さです。試しに真昼の地面を軽く触ってください、きっと思わず手を引いてしまうくらい熱いはずです。それもそのはずで、夏場の地面は65℃以上もの高温になることもあるほど熱せられています。真昼の散歩は、柔らかい肉球を65℃にまで熱した石を上を歩かせているということです。
さて、涼しい時間帯に散歩するとしてもまだまだ考えなければいけない事があります。散歩コースにある日陰や給水所の有無、タオルや身体を冷やすものなど、万全の対策をして散歩しましょう。たかがその辺を散歩するだけ……そんな油断を熱中症は突いてくるのですから。
絶対にやってはいけない車内放置
人間の子供に対しても、そして犬や猫に対しても最もやってはいけない行為……それが車内放置です。これは何も大げさな話ではなく、立派な虐待行為に等しいです。実は車内放置による死亡事故は数年おきに1〜2件程度起きており、更に未然救出件数はなんと毎年30〜100件程度にも登ります。
これは人間のデータではありますが、犬に対してもその危険度は変わりません。実際、過去には犬を車内に放置し、結果として熱中症で亡くなったケースが度々報告されています。どれだけ愛情を注ごうとも、どれだけ大切にしていたとしても、「まさかこんな事になるなんて……」と後悔したところで、失った命は返ってきません。【まさか】ではなく【もしも】で考えて行動しましょう。
ペットの熱中症は生命に関わる!
熱中症は対策こそしている人は多いですが、どこか自分はならないと高をくくっている人も少なくありません。確かに水分補給や体温調節さえ万全にしておけば熱中症のリスクは抑えられますし、初期症状のうちに応急処置することで完治します。しかし、だからといって油断できるものでもありません。
熱中症は状況次第でわずか数十分で陥ることも、その状態からすぐに重症化することもあり得ます。そして犬や猫などの熱中症に弱い動物たちは一度重症化すれば、1時間もしないうちに命を落とすことだってあるのです。ペットの命を守れるのは飼い主様しかいません。熱中症には十分に気を向け、楽しい夏をお過ごしください。