猫を象徴する部分はどこかと聞かれれば、必ずといって良いほど名前があがるのが肉球。プニプニとした独特な感触は多くの愛猫家を虜にしてきました。そんな肉球ですが、実は猫の生活を支える重要な役割を担っていることは知っていましたか?
今回は肉球の役割やケア方法について解説していきます。
目次
実はとても重要な肉球の役割
猫だけでなく、食肉目にはほぼ必ずある肉球。まずはその肉球がなぜあるのか、どんな役割を担っているのかについて見ていきましょう。
肉球の仕組み
猫の肉球は前足と後ろ足で微妙に異なります。
前足の構造は
・足の真ん中にある掌球(しょうきゅう)
・狼爪※1と4本の指の手前にある5つの指球(しきゅう)
・人間で例えると手首の付け根あたりにある手根球(しゅこんきゅう)
これらを合わせた計7本の肉球で構成されています。
それに対して後ろ足の構造は
・掌球と同じ位置にある足底球(そくていきゅう)
・後ろ足には狼爪がないため計4本の指の分だけある趾球(しきゅう)
これらを合わせた計5本の肉球で構成されています。後ろ足は前足に比べて狼爪の分と手根球がないわけですね。また、多指症の猫は指の本数分だけ肉球も増えます。
肉球の内部は脂肪をたっぷり含んだ弾性線維が網目状になっており、それを丈夫な角質で守っています。プニプニとした感触はこのような構造となっているためです。
肉球の役割~狩り~
猫は食肉目に分類されており、狩りをして生きています。しかし、いくら猫が早いといっても、動き出す前に獲物に気づかれては逃げられてしまいますよね。プニプニとした感触の肉球はクッションの役割を果たしており、ギリギリまで足音を消して近づくことができます。猫は犬と違って爪を収納できるため、肉球と合わせると本当にまったく足音がしなくなります。
更にクッションとして役に立つのは足音を消すことだけではありません。猫は高所から飛び降りても平気な顔をして歩いていますが、実はそれも肉球によって衝撃を緩和しているからなのです。
肉球の役割~体温調節~
体温調節において、最も重要なのは『汗』です。汗を出す腺には、白く脂っぽい汗を出すアポクリン腺と、透明でサラサラとした汗を出すエクリン腺の2種類があります。人間の場合、全身にエクリン腺があるおかげで体温調節がうまく、脇の下など一部にのみアポクリン腺があります。
一方で猫はアポクリン腺が全身にある代わりに、エクリン腺はごく一部にしかなく、その一部の場所こそが肉球なのです。猫は全身を舐めるグルーミングと肉球から分泌される汗でしか体温調節をすることができません。よく『猫は暑さに弱い』と言われるのには、こうした理由があるためです。
因みに、アポクリン腺から出る汗は体臭の原因にもなるほど匂いが強いですが、犬や猫はこれをフェロモンとして使っています。
肉球の役割~感知センサー~
猫はよく、物や地面をちょいちょいと手でつついていますよね。実に可愛らしい仕草ですが、実はこれは物体や地面が危険なものなのかを判断するためにしているのです。肉球は手足の中でも唯一体毛に覆われていないため、触った感触や温度がダイレクトに伝わります。つまり、肉球は一種の感知センサーとしての役割も持っているというわけですね。
しかし、敏感であるために傷や火傷に弱く、ケガをした時の痛みや痒みも強いという欠点も持ち合わせています。手足が傷ついた時にしきりに傷口を舐めようとするのは、それだけ猫が違和感を感じてしまっているからです。
肉球の正しいケア方法
肉球はとてもデリケートな部分であり、毎日の適切なケアが必要不可欠です。そこで、ここでは肉球の正しいケア方法について解説します。
肉球の保湿にはクリーム
猫は室内で飼うことが多いと思いますが、そうなると気になるのはやはり室内の湿度。特に肉球は乾燥に弱いため、充分に加湿していないと肉球がカサカサになってしまい、ひび割れの原因にもなります。部屋の湿度には気を配りつつ、日ごろから保湿クリームで保湿をしてあげましょう。
保湿クリームといっても色々な種類がありますが、猫のためのクリームであれば【無香料】の【ペット用保湿クリーム】を選んでください。人間が使うクリームは、人間にはいい香りや有効な成分が含まれていますが、猫にとっては有害な成分となることがあります。
ペット用のクリームは、ココナッツオイルやオリーブオイルなどの自然由来の成分のみで作られているので安全に使用できます。クリームを塗る際、量が多すぎると猫が転んでしまうため、適切な量だけ塗るようにしましょう。
肉球をケガした時
いくら室内が外より安全であっても、小さなガラスの破片や観葉植物の棘などが肉球に刺さってしまうこともあるでしょう。
もし、かすり傷程度であれば、傷口を清潔にした上でワセリンを塗っていれば問題有りません。しかし、傷口が深い場合は猫が気にして舐めてしまうため中々治りません。下手をすれば悪化してしまうこともあるため、動物病院で診察してもらうのが一番です。
また、寒くなる今の季節は火傷にも気を配らなければいけません。もし肉球が火傷したら、すぐに患部を冷やしつつ、水ぶくれを潰さないようにしながら動物病院に連れて行った方がいいでしょう。火傷は治りづらく、放置しているとすぐに悪化してしまいます。
猫を外に出さない
飼い主の中には、猫を外に放し飼いにする人もいます。しかし、子猫の時からならともかく、成猫になってから外に出すのはおすすめできません。野良猫や小さい時から外で暮らしてきた猫は肉球を覆う角質も厚く丈夫になっていますが、そうでない猫の肉球は繊細で傷つきやすいです。
室内は、飼い主が環境を整えていればとても安全な空間です。鋭く尖った石も、熱かったり冷たかったりする地面もありません。交通事故に遭うこともないでしょう。猫の安全のためにも、飼育は基本的に完全室内飼いが望ましいです。
肉球は猫のトレードマーク!
飼い主や愛猫家から見れば、猫の肉球はただ可愛い部分でしかありませんが、本人からすれば【狩りのため】【体温調節のため】【危険な物を回避するため】と、正に生きるために非常に重要な部分なのです。猫の健康のためにも正しいケア方法を学ぶ事が大切です。
特に冬は、ストーブやコタツなど火傷の原因になる人工物がたくさん活躍する季節。室温や湿度に気を付けつつ、火傷しない・させないように心がけましょう。